社団戦1日目 自戦記「夜明け前の夜」 かとう
社団戦、いよいよ2017年シーズン初戦の日を迎えました。この時期らしく雨空でしたが会場に入って折りたたみ傘をしまってしまえばどうということはなく、朝の設営が遅れ気味に見えるところは初日らしいな、と。
どの席に座るのかもわかっていないまま駒や盤の設置を手伝ったりしていると、自分が2回目であることを感じてみたり。
そして2回目であるということは1回目があったわけでして、それはもうスバラシイ記憶です。
2016年シーズンは全局をノーマル四間飛車+美濃囲いで戦い、手元のメモによると結果は下記の通りでした。
全12局 0勝12敗 先手5局・後手7局
対右四間飛車 3
対左美濃 1
相振り飛車 8
(穴熊3・金無双1・美濃4/四間飛車 3・三間飛車 2・中飛車 2・向かい飛車 1)
ご覧の通りの12連敗で、半年の間「負けました」と頭を下げ続けたわけです。
つまり、この日の初戦は2017年シーズンの初戦でありながら、13連敗となるかどうかの1局でもありました。
昨シーズンは対居飛車が3分の1しかなく、いわゆる急戦型は1回もありませんでした。振り飛車側として対急戦を無視してきたつもりはありませんが、練習をどこかで心理的に後回しにしていたかもしれません。
さて、ようやく場所がどこかもわかり、5将の席に座ります。少し狭めなのはいつも通りです。棋具はさておき、なぜかこのゲーマー臭が漂ってしまう雰囲気はどうにかしないとマズいんじゃないと思います。個人としてはチェック柄+ジーパンを避けることで抗いたいところ。
それはそうと、お相手の方はこの雰囲気におさまりきらない堂々たる体躯。明るい半袖シャツ。奥に優しさをたたえた目つき。むむむ……カッコいい。対局時計に不慣れな様子が見受けられたため棋力はトントンかもしれませんが、人としての徳とか器で劣勢を感じます。
普通のイベントなら話しかけて人柄に触れてみたいところですが、ここは社団戦。過度な雑談をするのは気が引けてしまい、そのまま対局開始となりました。
▲7六歩△8四歩▲6六歩△3四歩▲6八飛△6二銀▲4八玉△8五歩▲7七角△5二金右▲3八銀△4二玉▲3九玉△3二玉▲7八銀△1四歩▲1六歩△5四歩▲2八玉△4二銀(第1図)
▲7六歩△8四歩でこちらとしては対抗型が確定し、△4二銀に急戦調の香りを感じます。いきなり昨年は出現しなかったパターンになりそうです。
▲5八金左△7四歩▲6七銀△5三銀左▲5六歩(第2図)
普段の対局相手にも居飛車急戦で仕掛けてくれる方が少数派で、練習不足からと思われる自信の無さというか感覚の乏しさみたいなものを感じています。
第2図の局面で既に薄い不安を覚えており、▲4六歩を突いて高美濃を目指すと角を転換しての反撃がなくなるから…くらいの弱い根拠で▲5六歩と突いています。もちろん、5筋の歩が切れれば攻防ともに使い道があるわけですが。
△6四歩▲9八香△6三銀▲7八飛△9四歩▲9六歩△4二金上▲6八角△4四銀(第3図)
待機がてら香を逃げたり飛車を転じるものの、△6三銀の意図はわかっていませんでした。直前まで7三から8四へ進めてくるのとばかり思っていました。
△4四銀で、そうくるのか!と。角筋に銀を乗せてこようとする意志を感じます。5筋で歩を交換した後、5四に歩を打ちにくくするために6三に銀を進めたのか、と解釈しました。
▲7五歩△同歩▲同飛△7四歩▲7八飛△5五歩(第4図)
こちらから何をしたら良いのかわからず、とりあえず一歩交換。△5五歩と突かれてから、さてと考えます。6五歩から7六銀とか4六角とかあれこれ…。
▲同歩△同銀▲7七角△5六歩▲6八飛△7五歩▲7六歩(第5図)
…いろいろと考えて考えて考えて同歩。これはたぶん一番ダメなやつで当然ながら5段目に進出され、以後は受け一方に。この将棋、最初のガックリポイント。
銀の進出を考えて▲7六歩…が、この時は指した直後に2回目のガックリ気分に。6五歩同歩5六銀同銀2二角成同玉に5五角(妄想図)
…で王手飛車取りだったじゃないか、という思いが浮かぶ。実際はこうならないのに。
△同歩▲同銀△8六歩▲同歩△8八歩打▲9七桂△8九歩成▲6七銀△9五歩(第6図)
これはこれで6・7筋から棒銀調に反撃できないか…とも思っていました。一方で先ほどの筋がチラついて、やり直したくもなっていました。
どうせ取られると左桂を跳ねましたが、チラついた筋に従って一度進めた銀を自ら戻しているのだから何をやっているのかわかりません。
実際戻してみると、6五歩同歩5六銀には6六銀と滑り込まれて、同角同角に同飛とすると伸びてきた歩でヒモがついていて奈落行きであることに気づく。ひどい。ガックリ。
6五歩とか7五銀とかの方がマシだったかもしれませんが、この時は益なく時間を費やしてしまうばかり。
▲6五歩△同歩▲5六銀△6六銀▲同角△同歩▲8五桂△7九と▲5五歩打△7七角▲7四歩△同銀▲7三銀△同桂▲同桂成△8六飛▲7四成桂△5七歩▲5九金△6八角成▲同金(第7図)
時間がなくなる中、他の手が思いつかずに突いて、当然滑り込まれて、角銀交換の損を受け入れます。手を進めるたびに、負けに近づいている感触がありました。
飛車の侵入をいったん防いだり角道を遮ってみたりするものの、伸びてきた6六の歩は払わせてもらえません。
仕方がないので7筋をいじってみます。駒損が拡大するも、成桂での攻めをひねり出したい一心。
△8八飛成▲7八歩△同と▲5七金△7七と▲4八銀打△6七歩成▲同銀△同と▲同金△6九飛打▲5七金△4八竜▲同金△3九銀▲1八玉△2八銀打▲2六歩△4八銀成▲2八玉△3九飛成▲2七玉△3八竜(投了図) まで、100手で後手の勝ち。
4八銀を打たれないように5七の歩を払ってみても、と金での攻撃がシンプルかつ強力。
最後の最後、▲2八玉では銀を取らずに▲2七玉と逃げた方が紛らわしかったかもしれませんが、誤差の範囲でしょう。
これにてシーズンまたぎでの13連敗に到達。
自分は昨年から参加したので、ねこまどチームが初参加した2015年シーズンにメンバーが舐めた苦渋の味は知りませんが、これはこれで今年も勝てないのではないと思わせてくれる深い不安の味。
対局中、相手の方が対局時計のボタンをたびたび押し忘れていたので、そのたびに指摘しながら指していました。
黙っていれば時間切れ勝ちになった可能性は小さくなかったです。
昼休みにチームメンバーとも話したのですが、この将棋の場合は内容からしてそれも相当に味が悪く、その意味でこれからも指摘はするつもりです。
ただ、それでチームとして負けていたら?と思うと難しいところで、団体戦特有の悩ましさかなと思いました。
初戦に気が入っていなかったつもりはないですが、もう一段締まった気もしました。
この後、続く2試合目に角損から感想戦を放棄されるレベルの逆転でついに初勝利、4試合目も5手詰が生じた局面から相手の方が終局後に頭を抱えるレベルの逆転で、自分としては連勝。
ひとまず長い夜は明けました。
すぐに次の夜が来るのか、しばらくは昼の住人となれるのかは次の月の話になります。
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